足で歩いて、人と話して、前に進める農業がある

農業をビジネスと捉えると、現状の収益にプラスαするために必要なのはマーケティングで。
その先には、地域振興や観光まで巻き込んだ、ブランディングと雇用促進もめざしたいですね

まとば農園 五日市 達洋さん(二戸市金田一)

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ゲストプロフィール

今回のいわて未来農業創造人は、五日市達洋(いつかいち たつひろ)さん28歳のりんご農家さんです。五日市家の三男として生まれ、青森県営農大学校でりんごづくりを学び2013年から就農し50年以上続く実家のりんご園を引継ぐ形で営農中。岩手の県北で、土地柄を生かした美味しいリンゴを生産。その美味さを余すところなく味わってもらいたいと、最高のタイミングでの出荷コントロールを目指している。

降水量の少ない地域に育つ味の濃いりんご

まとば農園は、二戸市の金田一の山に囲まれた盆地の法面でリンゴを栽培しています。
降水量の少ない地域で日照時間が多く味も濃くなり蜜入もよく、りんごに最適な地域です。
岩手では、割った瞬間に蜜たっぷりの「はるか」という品種があり、二戸地域は特に盛んで、農協では特に品質の良い「はるか」を「冬恋」というブランドで出荷します。

糖度が自慢、3000本のりんごの木

まとば農園は「ふじ」を中心に、12品種、およそ3000本のりんごの木を栽培していますが、12品種というのは実は少ない方で、他の地域だと20超えているところもあり、あえて抑えているわけではなく主に「ふじ」をメインにして9月の早い時期の収穫から「サンふじ」の11月まで、順に継続していくための12品種です。
味の濃さ糖度においてもトップレベルということで、他の地域のりんご農家さんからも一目置かれる存在となっていて、金田一の中では、ほかの農家さんも糖度の高いところはありますが、青森県や江刺の地域の自分との繋がりがある方からは「糖度高いねすごい」って言われてます。

消費者とも触れ合いながら段階的に上を目指す

出荷は大きく分けて収益のメインであるJA向けのほかに3つほどあります。
①りんごの立木オーナー制 ②ギフト用の個人直売 ③数年前から取り組み始めた盛岡市を中心としたスーパーの産直コーナー ですが
JA出荷は一番多く、もともとマーケットを確保しているので安心というのがあって、品質を一定以上を満たせば平均出荷価格になるという利点があります。立木オーナー制は、50年以上続いていて、去年初めて50年っていうのを知り、今でも続いているってすごいと思いました。このオーナー制については、収益目的とは別に地域振興として続けていければいいと思っています。
また、スーパーの産直コーナーについては、農協さんのほかにも自分で出荷できるところがあればという観点で親父がはじめ、今は自分がメインで5年、6年前からです。
農協出荷はメリットだけでなく課題もあり、納入受付日に間に合わせて出荷しなければならず、成熟しきれず基準値を満たせないものは、その後1週間も成熟させれば、基準を満たせると思うものがあり、それらは残念ながらはじかれてしまいます。
それなら、成熟させてから出せば、農協の納入受付が終わっていても、自分の手で出荷できると考えました。

自作のアプリで出荷調整

そこからスーパーへの出荷が始まり、最初は一番近い西根店に出荷し、そこから盛岡市を中心として分配されましたが、折角のりんごが余ったり、逆に足りないということも。そこで3年ほど前から、スマホの表に店舗名と日付と商品の納入数量を入れ、各店からメールでくるデータを入力するようにし、販売状況の結果が出だせるアプリを作りました。
そのアプリで、各店舗の在庫状況が目に見えてわかるようになり、足りない店舗に多めに配分したり、余っているところから回したりと工夫できるようになりました。
返品がなくなれば、その分売れているということなので、収入が増え、季節によっての変動もわかりやすくなりました。早生の品種から晩生種まで、品種ごとにデータも判るようにしています。また、もう1つの取り組みとして各店舗に足を運び直接担当者の人と面識を持つために各店舗を回り、声を掛けられ「今度イベントがあるけど、どうですか?」ってイベントに呼んでもらえる機会が増えました。

味ワングランプリにチャレンジ

弘前市で開催の「りんご王者決定戦」は「味ワングランプリ」ともいわれて、味を基準にして審査する品評会があります。一般的に品評会は、見た目の審査ですが、こちらは味で一番を決めるので、ここに出品して、自分のりんごがどの位置にいるのかを知り、たくさんの人に周知できるようなりんごを作って行こうと思っています。このグランプリには、全国からりんご自慢が来ているので、グランプリを目指したいですねという五日市さん。
大きな目標ですね。ところで具体的な数字の変化については・・・
スーパーへの出荷が9月から販売終了の3月くらいまでの7ヶ月間で、それぞれ約50~80万ほどですが、表アプリで集計するようになって月約10万ずつ上がりました。一番売れたサンふじの月で、100万ほどになってうれしい結果でした。今後段階的にこれを毎月100万、100万、100万っていけるような状態にできればうれしいです。

繋がりを大切にしてきた五日市さんだからこそ

五日市さんは岩手県農協青年組織協議会の副会長でもあり、活動を通して常に人とのつながりを大切にする五日市さんだからこそ、一つ一つのつながりを大切にして来られたのかなと思いました、消費者や店舗の担当者さんとのコミュニケーションも、このシステムには必要なことなのかなと思います。

地域ブランドを掘起こし雇用を創る

さらに、課題は収益だけでなく地域ぐるみで取組みたいこともあります。

①二戸の特徴を活かした地域ブランドの掘り起こしを目指す。
②地域ぐるみでの農産物の品質の底上げと安定した供給を可能にしたい。
③地域の農家同士の協力強化と雇用の拡大を実現したい。

五日市さんは地元のカシオペアFM「新じゃご太郎ラジオ」のパーソナリティもやっておられて、自分はりんご農家、もう一人は花農家担当の2人1組のクロストークでリスナーの皆様に今のりんごや花の状況の情報を伝えるような番組になっています。

今の思いを伝えてください

五日市さんのような地元愛あふれる若い世代が、地域活性化にも頑張っている姿、本当に勇気をもらえますね、二戸のこれからの発展も本当に楽しみです。ぜひ視聴者の皆さんに向けて、今の思いをひとこと伝えてください。
「今の収入プラスアルファを目指すために、まずはマーケティングが必要だと思います。その先に目指すのが「地域との交流と振興」これができれば一番いいかなと思っております。」
五日市さん、素敵なお話、本当にありがとうございました。

<今・回・の・お・ま・け>

「美味しいリンゴジュースがポン酢になる話」
是非、動画の最後でご覧ください