祖父の経験と知恵を受け継ぎ、地域の稲作の担い手を目指す!

「祖父や周辺地域から託された水田を守る。
 先輩たちの知恵と技術を受け継ぎ、稲作を将来へ繋ぐ。
 農家の担い手になると決めて夢中でやってきて7年目
 最近ようやく、誇りを持ってやれる自信が湧いてきた!」
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齊藤夏樹さん(花巻市成田地区)

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ゲストプロフィール

今回のいわて未来農業創造人は、花巻市と北上市にまたがった地域でお米づくりをしておられる齊藤夏樹さんです。
北上市の県立高校を2010年に卒業後、すぐに民間企業に就職され、重機オペレーターとして7年間勤務の後、お爺様がやっておられた稲作を引き継ぐために2017年に就農。
80代のお爺様から指導を受け、2年前からはご自身がメインで本格的に稲作を始め、今年7年目となる営農ストーリーを伺います。

夏樹さんが管理している水田のある、花巻北上地域の特徴を教えてください

ここは、花巻と北上の境界線上にある地域で北上は工業地帯、花巻は田園風景の広がる地域で、岩手の穀倉地帯と言われる県南の奥州市と並ぶ稲作が盛んな地域です。
ただ、この辺も農家の高齢化が進んでいて、就農人口は減ってきています。
広大な水田が広がっている地域ですが、田んぼの地主さんは細かく分かれ、区切りも入り組んでいて効率のいい大規模農家ばかりではありません。
その上、高齢化で後継者不足の農家も多く、このまま休耕田が増え続けて、水田がまだら模様になると、ますます大規模な稲作がやりにくくなります。
そんな中、減反政策が始まった1970年代頃から徐々に危機感を持つ、若い担い手がいる農家や法人化した農家が、休耕田を預かり米作りを継続しようとする動きがあります。

今管理してる水田は30haということですが、それもこの流れの一環なんですか?

はい。うちの田んぼ自体は5haで、他から預かっている水田が約25haで、合計30haです。
預かりの田んぼはまとまっておらず、花巻・北上のあちこちに散らばってる感じで、地主さんも細かく分かれています。
預かりの田も含めて管理し始めたのは祖父の頃からで、結構前から徐々に面積を増やして7年前に私が手伝い始めたことでさらに追加で預かり、今の面積になった感じです。
私が手伝うようになって面積も収量も増えてきたというより、私の人件費が増えた分、収益を増やさないとやっていけないという現実もあり、否応なしに拡張せざるを得なかったということです。
そして祖父の指導もまた厳しく、喝を入れられることもありましたが、その指導の内容は本当に必要な知識や技術であったので、すっと入ってきました。

夏樹さんがメインでやるようになり2年目ですが、実際にやられてみていかがですか?

経験を積むことはたくさんあって、大変は大変なんですけど、でも会社勤めに比べれば、ちょっとしたことも自分で考えていろいろ試したり、作業のペースもタイミングもある程度自分で調整できるっていうのは自分には合っていて良いなと思っています。あとはやっぱり収穫時期の達成感っていうのは最高ですね、やりがいを感じています。
今のところ規模拡大とかはなかなか難しいところですね。正直、今は現状の面積でも精一杯です。耕作面積を拡大するには人手を増やすか、作業工程の大幅な省力化が必要で、どちらも簡単なことではないですね。今は省力化できそうなことから、少しずつ新しい方法や工程の改善などを探っている感じです。
具体的には、スマート農業は可能ならやりたいですけど、まだまだ費用が高額ですし、今のところ実際にやれているのはドローンくらいです。ドローンはもう他でも使用されていますが、私も広い面積での薬剤散布で時間短縮になっています。
あとは自宅にある精米工場の設備も少しずつ拡張しています。

自宅に精米工場があるんですか?その設備はどんなことに対応するためですか?

はい、工場があります。精米工場では籾の乾燥、籾摺り、選別から袋詰めまでやっていて、出荷する米の品質確保のためには、高性能な選別機が必要だったり、30キロの米袋での出荷だけでなく、1トンのフレコンバッグでの出荷設備がないと、多くの田んぼを預かって出荷までするというのは難しいです。
稲刈後の籾の状態で農協さんへ渡し、農協さんのカントリーエレベーターでの精米も可能ではありますが、当然手数料もかかり、少しでも収益を上げるためには、自前でできた方がいいですね。
耕作面積を大きくするためには、こういった設備も必要かなと思います。

自宅に精米工場があるんですか?その設備はどんなことに対応するためですか?

はい、工場があります。精米工場では籾の乾燥、籾摺り、選別から袋詰めまでやっていて、出荷する米の品質確保のためには、高性能な選別機が必要だったり、30キロの米袋での出
荷だけでなく、1トンのフレコンバッグでの出荷設備がないと、多くの田んぼを預かって出荷までするというのは難しいです。
稲刈後の籾の状態で農協さんへ渡し、農協さんのカントリーエレベーターでの精米も可能ではありますが、当然手数料もかかり、少しでも収益を上げるためには、自前でできた方がいいですね。
耕作面積を大きくするためには、こういった設備も必要かなと思います。

米作りのためには、その他にどんな種類の農機具があるのでしょうか。

トラクターは目的別に大小合わせて6台あって、馬力の違いによって新車で450万~800万円くらい。8畳植え田植機は新車で500万円超、育苗用のハウスも必要ですし、稲刈り用の
大型コンバインは新車で2,000万円で、さらに毎年の整備費は60万円くらいかかります。
その他に農機具を運ぶためのユニック付きトラックや収穫後の籾を運ぶダンプ、精米工場で使うフォークリフト、薬剤散布用の農業用ドローンもですね。中には30キロの米袋を持ち
上げて補助をするだけの変わった設備もあって、それがないとすぐに腰を痛めてしまうので、大変重宝して使っています。
米作りには多くの物や費用が必要だし、いろいろ目に見えない苦労もあるということです。

今、夏樹さんが感じていらっしゃる課題として、どんなことがありますか?

まだまだ経験不足でわからないことも多いのですが、課題と感じていることの一つとして、例えば田植え前に稲の苗を作るのですが、その苗の品種などはその年の気候予測や状況で変わるため経験を重ねないと難しく、今もかなり祖父を頼りにしている状態です。
他にもまだまだ祖父から引継がなければならないことも多いと思います。
そして、農家の高齢化が問題と言われていますが、本当は高齢化していることだけが問題ではない思うところもあります。80代の祖父は体力的にも無理がきかなくなってはいます
が、経験や要領をいろいろ教えてくれる知恵の宝庫だと思います。
だから、農業に参入する若い人は、今のうちに高齢者からどんどん吸収するべきだと思いますし、実は高齢者の方も伝えたい気持ちをたくさん抱えてるのではないかと思います。

1年を通して多くの作業があると思いますが、作業や仕事量の波はありますか?

夏は水田の水温水量の調整。天気を見て朝早くから半日くらい水田を順に見回りし、水の調整作業自体はそう大変でもありません。雑草対策や病害虫対策はドローンの薬剤散布で昔に比べて楽になったとは思います。
ただし、田植えと稲刈りはタイミングが命で、一気にやる必要があり自分と祖父だけでは無理。その時期は周囲の農家さんも忙しいわけですが、祖父の代からつながりのある農家さんと助け合ってなんとか回しています。
そんな相談や協力し合える仲間がいるというのは心強いです。
夏樹さんが語る農業への真剣な取組みと意気込みの中に「歳を重ねた熟練生産者の知恵は宝の山。アイデアと行動力ある若い農業参入者は宝石の原石」そんな意味合いも伝わってくるような貴重なお話を今日は伺うことができました。

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「うちの新米はやっぱり最高」「新米をより美味しく!卵かけレシ
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