子供達に故郷の美しい景観と環境を、農業の力で残したい。

一流企業のサラリーマンから一転、故郷(ふるさと)奥州市で就農。
標高350Mの山間地の美しい景観と環境を活かしたハウス栽培で
江刺大玉トマトのブランド化と6次産業化で、地域の再生を図る!
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吉田雄次郎さん(奥州市江刺地区)

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ゲストプロフィール

今回のいわて未来農業創造人は、一関高等専門学校を卒業後、関東の某有名メーカーに就職。26歳で故郷奥州市江刺の代々農家の実家に戻り、棚田も並ぶ美しい山里の日本の田舎の原風景のような自然あふれる環境で江刺大玉トマトの生産に取組んでおられる吉田雄次郎さんです。
ご実家は代々農家で牛と稲作をやっておられ、時代のあおりを受けてその後、野菜の栽培に転向した吉田家。雄次郎さんはその家に次男として生まれました。農家は兄が継ぐものと思っていましたので、学校卒業後そのまま神奈川で就職して、全く農業をやろうとは考えていなかったという雄次郎さんです。

地元に帰って就農しようと思ったきっかけは?

元々すごく地元が好きだったので、25歳手前ぐらいに地元に帰りたいという思いになり、そんな折に関東のテレビ番組で千葉県の農業法人を取り上げた番組があり、それを見てなんというか今まで私が持っていた農業に対するイメージをいい意味で覆されたというきっかけがあり「自分も是非農業をやってみたい」という思いになり、地元に帰って農業を始めました。その頃、地元の過疎化が進んでいて農業人口もどんどん減り、奥州市江刺の主幹産業の農業がどんどん廃れていくのを目の当たりにして、ぜひそこは故郷をなんとかしたい気持ちの自分が何か力になれればという思いで農業を始めました。

昔、江刺は全国に先駆けた大玉トマトの生産地だった

「私が就農する、さらに前40年くらい前にはトマトを全国的にも先駆けた、トマトの生産地域だったんですね。その頃は地域全体で7億円くらいトマトの販売額があったと聞いてました。ただ、今は農業人口もどんどん減っているというのもあって2億円くらいまで落ちているというのが現状ですね。」「高齢化によって人が減ったこと。トマトはかなり重量のある作目なので、高齢化が進むことでトマトから別の野菜に転向する農家さんが増え、トマトを作る方が減っていったのも要因かなと思います。」
今、地域のトマト農家としての吉田さんのポジションは?とお聞きすると
「栽培面積では、今のところ全体の生産者の中で2番か3番目くらいの栽培面積です。」
出荷量では農協職員の方から「今年は一番の出荷量でした」ということをご報告いただきましたと言いつつも「なかなか厳しい現状はありますが、やはり私が就農するに当たり、先輩方から教えていただいた技術が実を結んだ年だったのかなと思いますし、今後もこれを続けていけるように頑張っていけたらと思います。」と謙虚で熱い答えが返ってきました。

全く違う仕事からの転職で、最初は栽培技術はなかったんですよね?

「はい、家は野菜農家でしたが、農業高校等の教育機関を経たわけではなく、決して農業に興味があったわけでもなく、知識としては0の状態でした。逆に0から新しい知識を色んなとこから吸収したいと思いまして、江刺でも珍しい水耕栽培の取組みや、多品目の野菜を作っておられた菅野ファームの菅野保男さんのところで(早く就農したいという思いが強かったので)通常2年間の栽培・就農研修を、何とか1年間でとお願いしてぎゅっと1年で野菜の年間サイクルや技術を学ばせていただいたって感じです。」

菅野ファームさんはどなたかからの紹介だったんでしょうか?

「就農したいという考えを持ってから、地元奥州市の農業改良普及センターというところに研修場所をどこか紹介していただきたいとお願いして、菅野ファームさんを紹介していただきました。」「菅野ファームさんでは、私以外にも数名同じように農業をやりたいという若い人を受け入れて農家を育てていて、私も一緒にお世話になりました。こんな形で相談できるところがあるっていうのは本当にありがたいなってつくづく思います。」

現在は専従の奥様、そしてパートさんが3人で作業されているんですね?

「今、ハウスの面積が30アール、県内のトマト栽培の面積でいえば、少し大き目かなというぐらいの面積なんですが、私としてはちょうどいい人数かなと。ただ、うちのトマトの栽培は夏から秋にかけてのすごく暑い時期で、従業員さんには体力的にきつい時期になります。長く働いていただくためにも、極力作業効率とか休憩などはしっかり管理して働きやすい環境を心掛けてます。」

その他にも課題はありますか?「はい、物価高騰や資材の高騰がすごくて、その生産コストをしっかり抑えなければと思います。あと栽培環境ですね。最近は異常気象も多くなってきて、そこに対応できる技術をしっかり学ばなきゃなと思ってますが、私だけでなく江刺のトマト生産者の若いグループで環境モニタリング測定装置を導入して課題を見える化し、気象状況がどういう影響を与え、それをどう解消できるか、そんなことをみんなで研究したりしました。」

現在、岩手県農協青年組織協議会の副会長もしておられるんですね

「はい、副会長を務めさせていただいています。農作業の合間に集まって会議や活動をするということで、なかなか忙しい部分もありすが、それ以上に経験したことのないような体験もできるので、すごくいい機会と思って取組んでます。」
「今、具体的な取組みとしてJAバンク岩手さんと小学生向けの食育の教材を一緒に作成させていただいております。小学校4~5年生向けの教材で、青年部の仲間も漫画で登場する楽しい教材になっていて、岩手の農業を子供達にもわかりやすく解説している食育教材です。農業に取組んで、この先を未来につないでいくという使命は青年部としても強い思いがあり、小学生のみなさんに食育や農業を伝えられる機会をいただけたのはすごくありがたかったと思います。」出来上がるのが楽しみですね。

メインの出荷先はどちらになりますか

「JA江刺への出荷が、ほぼほぼ99.9%ぐらいです。生産したものが売れなければ収入につながらないわけで、生産したものの販売を全てJAさんにお任せできるのはありがたいです。やっぱり販売の方にまで気を回すとなると、どうしても生産の方がおろそかになりがちですが、ほぼ全部買い取ってもらえる仕組みは農家としてもありがたいですし、新規就農した方もすごく活用しやすいのかなって思います。頼りになりますし、今後もしっかり付き合っていけたらなと思ってます。」

これから収量アップや新しい展開は考えていますか

「はい今、30アールほどですけど、やはり50アールくらいまで規模を拡大して収量を増やしていけたらと思います。規模だけでなくて、限られた面積の中でも収量をアップさせて利益を大きく増やせればと考えて栽培しております。」
「今後の展開としてはJA江刺に出荷しているトマトの知名度を上げてブランド化したいという思いはすごくあります。あとはそうですね、現在、輸入の化学肥料の値段がすごく上がってきているということで、例えば極力国内でまかなえる有機肥料を活用して、堆肥とか、木質肥料とか、そういうものを活用して海外からの輸入肥料に頼らなくても栽培できるような体系をとっていきたいと考えてます。」
さらに「現在、個人的にはトマトジュースを商品開発しています。栽培の中でどうしても農協出荷できないなものが出てきてしまうんでが、赤くなりすぎとか、少し裂けているとか、そんなトマトも生で食べれば全然おいしいんですけど、流通にのせられない。それを無添加のトマトジュースにして皆さんにお届けできたらいいなという思いから、トマトジュースを作り始めました。」「ラベルもうちの妻のアイデアを存分に盛り込んだかっこいいラベルが完成しました~」と照れ笑いの吉田さん。

最後に今後目標とする営農スタイルがありましたら教えてください

「当初は私が農業を始めるきっかけになった千葉県の農業法人さんのような大きく作って大きく稼ぐスタイルに憧れていたんですが、8年以上続けてみて地元江刺の農家さんの技術に長けた方、栽培形態を作り上げるのが上手な方、雇用を作るのが上手な方、地域に密着して個人のブランドを大きくしている方とか、すごく頼りになるかっこいい先輩の背中を見て、そんな先輩たちのちょっとづつ良いとこ取りしたような経営スタイルを目指していけたらと思っております。」

<今・回・の・お・ま・け>

「地域の小学校が統廃合になり残った校舎を地域の活性化にという話」
「トマトジュースの超素敵なラベルデザインとオシャレな飲み方レッドアイの話」
ぜひ最後までご覧ください。