「若い僕らが農業を経営する意味は大きいと思う」
高齢化が進み農家減少の危機感はあるが、反面土地や豊かな環境を守る若者にとって、今は規模拡大のチャンスでもあるのではないかと思う。
さくらだファーム 櫻田 大河さん・沙羅さん(岩手郡雫石町)
ゲストプロフィール
今回のいわて未来農業創造人は、さくらだファームの共に27歳の櫻田大河さんと沙羅さん。若いご夫婦のお二人です。
雫石町で祖父母が営む複合経営の農家を引き継ぐお二人です。大河さんは高校2年生のとき農業をしていらっしゃったお祖父様の大けがをきっかけに、高校を卒業後は 会社勤めのご両親に代わり、長男として農家の後継者となることを決意、奥様の沙羅さんは まったく農業とは縁のない家から農家のお嫁さんになった方です。
お二人は、祖父から受継いだ稲作、菌床シイタケ、和牛繁殖の複合農家経営を法人化しようと頑張っています。
岩手山を見上げる広く豊かな農地に、菌床センターを建てて椎茸を栽培
さくらだファームは秋田新幹線の雫石駅から車で15分ほどの岩手山がとてもきれいに見える広々とした田園地帯にあります。
自家の稲作10ヘクタール、受託の稲作2ヘクタール、牧草地6ヘクタールの他、菌床椎茸の栽培用ハウス8棟、和牛の繁殖10頭という複合経営の農家です。
農家を継ごうとしたきっかけは祖父の大怪我
子供の頃から農業の手伝いをして、いつかは農業をとは思っていましたが、高校2年のとき、一番主軸の祖父が大けがをして自分が農業をやらなければと、その時思いました。
農業大学に行くことも考えオープンスクールにも行ったが最初から祖父に習い自分でやっていくことを決意しました。その祖父は、今は元気で農業を一緒に頑張っています。
農業を始めたときに何をやろうかと考え、農協に出荷したときの販売単価に波がなく安定していたので菌床椎茸に決めました。また、米とか和牛繁殖も農協に出荷して、年収の安定に繋げられるよう、この3つを年中通して携わる形でやっています。
稲作と和牛繁殖への思いは?
沙羅さんは「夜ご飯2杯くらい食べちゃったりする」というほどのお米好き。日本人の主食の稲作はやめたくないという思いと、日本に洋食文化が広まっている中で、お米を食べる機会が減っているが、日本人として米食文化をなくしたくない思いから稲作は続けたいという。
代々受け継がれてきた家の田んぼもあるが、地域の高齢化が進んで、若い担い手のいる我が家のようなところに委託する農家もいて、地域の田んぼを守っていくためにも稲作はやめられないと思っている。
和牛の繁殖について大河さん。動物好きで小さい頃から牛がいる環境で育ち、自分が農業を始める時、高齢の祖父が牛の力の強さなどを考えてやめようとしていたところを、もう少し続けて欲しいと自分からお願いして、今は少しずつ頭数を増やしてきています。
雫石は牛の市場がすぐ近くにあり移動距離も少なく「雫石牛」というブランドもあり、自分はやめられないという思いで少しずつ拡大を考えています。
地元の牛がそこで生まれてそこで育っていくことは、とても素晴らしい環境だと思います。
農家のお嫁さんのポジションは
農業未経験で農家に嫁がれて大変なことが多いのではないかと思いますが、今の沙羅さんのポジションについてお聞きしました。
基本的にみんなと一緒に農作業をしますが、小さい子供がいて子育て真っ盛りということで外で仕事を一緒にするというのが難しい時もあります。
そういうときは、各種手続きや申告など事務作業をします。本当に覚えることが多く日々学びですけど事務作業っていうのもサポートの一つかなと思っています。
またSNSの発信もしていて、農業の魅力やワクワクする気持ちをシェアして、もっと若い人たちに農業って楽しいんだよっていうのを広めたいと投稿を頑張っています。
菌床栽培拡大の取り組みについて
農協さんへの出荷では、菌床椎茸は価格の変動が少なくお米もですが、他の野菜と比べ、椎茸は年収の安定につながっていてとても助かっています。
菌床椎茸は昔、雫石町が農協を通じて栽培の技術をいち早く取り入れたことがきっかけで、この地域に広まりました。今、雫石の椎茸は農協単価が県内でもトップクラスの品目です。
ハウス等の設備を整えることで通年栽培も可能で安定した収入を得られるということが大きな経営のメリットですが、高齢化も進んでいる中で今後の担い手として地域の椎茸栽培を支えたいという気持ちもあり、農協にも協力してもらいながら地域課題に取り組みます。
ただその一方で経営規模拡大のチャンスだとも感じていて、いろいろな可能性を秘めている農産物だと思っています。
昨年の春に菌床センターを建てましたが、もともとは祖父母が平成5年から菌床ブロック作りを自作の施設で行っていましたが、老朽化も進み雑菌も入りやすく、ロスも多かったので、大河さんが就農するときに新しい施設にしたいと考えました。
地域の菌床椎茸農家の高齢化とともに菌床ブロック作りの委託が増えてきたので菌床センター建設を決めました。
建設には多くの資金が必要で農協に相談し事業計画も一緒に考えていただきお金を借りることができました。その際無利息にもしてもらい本当に助かりました。
今は、一日約504菌床を作っていますが、11月から4月までで計5万5千菌床まで作ることが可能になっています。
この菌床センターを作ったことでの展開としては自家用の菌床数を今より多くすると共に、販売する菌床も増やし、高品質の菌床を提供したいというのがあります。
この菌床は高品質な純国産で岩手県産ということを売りにして販売を拡大できたらと考えています。
牛もそうですが、雫石で生まれ育ったものが広がっていくことは、本当に素晴らしいことだと思います。
生産者として大切にしていきたいことは
当たり前のことですが安心して食べてもらえる作物を提供したいと思っています。
私たち自身も子育てをしていて子どもがまだ3歳と1歳と小さいので食べものにはすごく気をつけています。
我が家の菌床も菌床椎茸も無農薬で、栽培から出荷まで一切農薬を使わず、そういう面では安心して食べてもらえると思います。
その代わり虫も安心して先に椎茸を食べてしまうことがあって、それは出荷作業で1つ1つ手作業で確認しながら真心込めて届けよるうに取り組んでいます。
自分でも、楽しくお客様や作物にも一生懸命向き合ってる農家さんから買いたいと思うし、自分たちも生産者の一人なので、そんな農家さんだからって選んでもらえるような農家になりたいと日頃から思っています。
今後の目標 そしてかなえたい夢は
自分の今一番の夢は現在の複合経営を一つにまとめて法人化することです。
理由は、効率化して管理するということもありますが、農業をやりたいっていう若い人が就農を考えた時に、他の職業と同じように選択しやすいようにしたいからです。
以前、2日間農業体験をした方が、農業に魅力を感じ、うちで働きたいと言ってもらえたことがありましたが、その人にも家族があるため、法人で福利厚生もあるところがあれば働きたいという話をされ、自分の中で残念な気持ち、もったいないという気持ちになりました。
雫石に移住して農業をやりたいと思っている人の受け皿になれればと思って法人化を検討しました。
高卒とか大卒といった新卒者の就職先としても、農業が選択肢の一つとなれることを目指しつつその魅力や楽しさを発信したいと思います。
でも、私たちのような生産者という道ももちろんありますが、農業に関わるということでは、農協に就職するのも農業に関わることですし、農機具関係や農業資材とかもそうです。そういった仕事も含めて検討してもらえればと思います。
今日は大河さんそして沙羅さん 素敵なお話本当に、ありがとうございました。
<今・回・の・お・ま・け>
「若い農家仲間と軽トラ市で、人と触れ合いながらの椎茸販売の楽しさ」
「椎茸菌床とカブトムシとSDGsの話」
是非、動画を最後までご覧ください。